Um Dich Zu Schuetzen




ボクノ傍ニイテクダサイ。
ボクガ触レラレルクライ近クニ…
ボクノ前カラ消エナイデクダサイ。
アナタガ消エテシマッタラ…

―ボクハキット存在デキナクナッテシマウカラ…










そのとき俺は、何が起こったのか理解できなかった。
さっきまでこの腕の中にいた小さなコドモ。
俺の手を離れていって…そして…?
儚く微笑んだ次の瞬間、悟空は手にしていたものの引き金を引いた。
銃声。
紅い色。
火薬の匂い。
流れ出す鮮血。
ゴトリという鈍い音。
力無く崩れ落ちた肢体。
噎せ返るほどの血の…匂い…。

何が起こったのか理解できない。
目の前にある現実を受け入れることを脳が拒否する。
いったい何が起こった?
今、目の前で起こったことは?
「どうしたんですかっ?!」
バタンっと扉が開かれる。
「!!」
声にならない声をあげ、悟空へと八戒は走り寄った。
扉のところでは驚いて棒立ちになっている悟浄。
八戒の手のひらから光が発せられる。
傷口から溢れる血の量が減る。
俺はその一部始終を目にしながらも、動くことはまったく出来なかった。


ベッドに寝かせられたその顔は白く、まるで生気が無い。
もしかしたら死んでいるのではないか…と、頬に触れる。
しかしその体はまだ死人のそれよりは温かくて…
何も考えることの出来ない頭で、ただそいつに触れていた。
「傷はふさぎましたけど…」
落ち着きますから…と差し出されたのは、ブランデーを少したらしたホットミルク。
黙って受け取ってそのままベッドサイドに置いた。
「ねぇ…三蔵?」
ため息とともに吐き出される言葉。
「一体…何があったんですか?」
びくりと肩が震える。
何が…一体、何があったのだろう…?
フラッシュバックする光景。
紅い色。
血の色。
「…わからねぇ…」
掠れた声で、そう呟いた。
いつだって傍にいるものだと思っていた。
ソイツが傍にいることに疑問も疑いももたなかった。
いつかいなくなる時が来るなんて、考えもしなかった。
いつまでも傍にいて、煩く付きまとってくるものだと…
なぜ、気付かなかったのだろう?
そんな保証なんて、どこにもないことに。
なぜ、気付かなかったのだろう?
コイツの痛みに。
自分のバカさ加減に嫌気がさしてくる。
コイツは求めていた。
たった一つの言葉を。
なぜ、それに気がつけなかった?



モシ、コノ世ニ神ナンテモノガイルトスルナラ…
アノ人ヲ連レテイカナイデクダサイ。
ボクガ触レラレルクライ近クニ…
ボクノ前カラ消サナイデクダサイ。
アナタガ消エテシマッタラ…

―ボクハキット存在デキナクナッテシマウカラ…



開かない瞳。
青白い顔。
ほんの少し前まで、あんなに元気に笑っていたのに。
「すまない…」
普段は決して言うことのない言葉を口にした。
また、俺は失ってしまうのだろうか?
大切な人を。
怖い。
怖い。
怖い。
怖くて、仕方がない。
不意に大切な人がいなくなってしまう恐怖。
できることなら、あんな思いは2度としたくない。
俺の命を削ってもいいから…
「目を…開けてくれ…っ。」
あの瞳を、微笑を、見ることが出来るのならば…
あの声を聴くことが出来るのならば…
何も要らないから…


「…さん…ぞ…?」
弱々しい声に、はっと顔をあげる。
俺を見つめる瞳。
まだ白い顔に、無理やり微笑を浮かべようとする。
その姿が痛々しくて…
「ごめ…な…」
「…いいから、喋るな。」
「でも…俺、さんぞ…に…」
「あとで、何でも聞いてやる…だから、今は…」
小さな手を握って、額に当てた。
謝らなくてはいけないのは、俺のほうなのに。
「ん…わーった…」
そう言ってまた悟空は瞳を閉じた。
このコドモを守りたい。
自分の傍において、見守って…
心から、そう願った。
すぅすぅと寝息を立てる悟空の額に一つキスを落とし、俺はその寝顔を見つめた。










ボクノ傍ニイテクダサイ…
ボクノ前カラ消エナイデクダサイ…
守レルクライニ強クナルカラ…






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