2月14日。
          どうやら世間では「ばれんたいんでぇ」とやららしい。
          八戒がこの間、こっそり教えてくれた。
          「好きな人にね、チョコレートを贈って告白する日らしいですよ。」
          なんでチョコを贈って、告白なのだろう?
          別に、普通に好きだって言えばいいのに。
          そう言ったら、八戒は笑ってた。
          「きっと、特別な日だって思うことで、勇気が出るんじゃないですか?」
          …そうかもしれない。
          何か、告白をするということが許されてるような。
          「悟空は好きな人、いないんですか?」
          八戒の問いに、何も答えはしなかったけど…
          スキナヒト。
          三蔵の顔が浮かんだ。
          八戒も、悟浄も好きだけど…
          でも、いちばん最初に浮かんだのは、三蔵。
          「俺って、三蔵のことが好きなんかな〜?」
          空を見ながら、考える。
          口は悪いし、すぐハリセンで殴るし、タレ目だし…
          でも、すごい綺麗。
          太陽みたいだって、よく、思う。
          「…よっし…」
          起き上がって、街へと走り出した。
          チョコレートを3個買う。
          小さいのが2つと、ちょっと大きいのが1つ。
          なんだかココロがウキウキした。

          宿に戻って、三蔵のいる部屋をノックする。
          「…俺だけど。」
          入ってもいいか?と確認する。
          無愛想ないつもの声で「開いてる」と三蔵の一言。
          かちゃ…と扉を開けて、中に入った。
          「…どうした、バカ猿?」
          扉のところで戸惑っていると、訝しげな声が飛んできた。
          「なぁ、三蔵…今日って“ばれんたいんでぇ”なんだって。」
          そう言って、買ってきたチョコレートを差し出した。
          「俺、三蔵のこと大好きだからなっ!」
          チョコレートを渡して、部屋から飛び出す。
          好きな人にチョコをあげて、好きだって言う。
          なんか気持ちいーかも。
          そう、思った。
          「次は八戒にあ〜げよっと♪」
          パタパタと廊下を走って、八戒の部屋へと向かったのだった。





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