アナタモ知ッテイルヨウニ、ボクハ禁忌ノ子供デス。 目モ、髪モ、血デ染メタヨウニ紅クテ。 ソレデモアナタハ… ボクヲ愛シテクレマスカ? ■ As You Know ■ 誰だって、好きでこんな風に生まれたわけじゃねぇ。 紅い髪。 紅い瞳。 妖怪と人間の間に生まれた、禁忌の子。 血で染まった、呪い。 別に俺が頼んで産んでもらったわけでもネェ。 「悟浄の髪って、綺麗な色よねぇ。」 馬鹿なカモが引っかかって、さんざん儲けて… バリ機嫌は良かったけど、その一言で、一気に冷めた。 バカな女が放った一言。 ヤってられねぇな。 「悪リィ。 俺、帰るわ。」 そう言って席を立った。 「えっ?! あ、ちょっと、悟浄!!」 髪をいじっていた女を払い落として、賭場を後にした。 ふぅ…。 外はすでに真っ暗で、吐き出した紫煙も溶けて消えていった。 家に帰れば、料理のいい匂いが立ち込めていた。 柔らかな微笑を携えて出てきたのは、ちょっと前から居着いた居候。 「おかえりなさい。」 そう言って出てきた八戒は、エプロン姿。 「…たでーま。」 靴を脱ぎ捨てて、居間へと向かう。 座るたびにぎーぎーと抗議するソファに、勢いよく腰をおろした。 「…何か、あったんですか?」 一瞬、躊躇うような間をおいて、台所から八戒が質問してくる。 「は?」 俺は一体なんのことを言っているのか分からず、訊き返した。 「いえ…なんだか、機嫌がよくなさそうでしたから。」 「あー…」 さっきの出来事を思い出して、顔を顰めてみせた。 俺だって好きで、この髪の色してんじゃネェっての。 「…すみません。」 八戒の謝る声で、正気へと返る。 「なに謝ってンだよ?」 「いや、なにか気に障るようなこと言ってしまったのかと思って…」 「…そうじゃネェけどよ。」 気を遣わせてしまったことに苦笑した。 一度は気にしないと決めたはずの過去。 だが、やっぱり時々は癇に障る。 「馬鹿な女にムカついただけ♪ それより…」 よっ…と立ち上がり、洗い物のためにシンクの前に立つ八戒の腰に手をまわした。 「えっ?!」 慌てた様子の八戒にはお構いなく、その耳元に唇を寄せる。 柔らかな耳たぶを軽く噛みながら、聞いてみる。 「今日の飯、ナニ?」 頬から耳にかけてほんのり紅く染まっている様が可愛らしい。 男相手に可愛いも何もないかもしれないが、可愛いと思ってしまうのだから仕方ない。 「あの…ビーフシチュー、ですけど…」 洗い物の手は止まったまま、俯きがちに八戒が答える。 そういえば、コンロには鍋がかけられていて、くつくつと煮えている。 玄関を入ったときに感じたイイ匂いは、きっとそれだろう。 相変わらず紅く染まったまま、スポンジ片手に固まっている八戒の耳へと音を立ててキスをした。 「腹減っちまった♪ 飯に、しようぜ?」 いつものように八戒が作った飯は美味かった。 食器を洗う八戒の後姿を視界に捉えながら、煙草をふかす。 どうしても八戒の、男にしちゃ細い腰やほっそりとしたうなじに、目が行ってしまう。 半分ほど吸ったタバコを灰皿でもみ消し、その背後から近づいた。 腰を抱き、耳元に舌を這わせる。 「ちょっ…ごじょっ…!!」 赤くなって抗議する八戒の唇を、自分の唇で塞ぐ。 八戒の手から滑り落ちた食器を落下前に上手くキャッチし、シンクへと置いた。 「ンなの、あとでイイから。 あっち、行こうぜ?」 寝室の方に向かって、軽くあごをしゃくってみせた。 男2人が寝るには、窮屈なベッドに腰かけて。 心地よいけだるさを感じながら、俺はタバコに火をつけた。 紫煙が月の光に照らされてゆらゆらと上っていくのが見える。 それをボーっと眺めていると、シーツに包まった八戒が口を開いた。 「あの…悟浄、今日の夕方のコトなんですけど…」 ちょっと言いづらそうに、俺と目をあわさずに八戒は言う。 「あ?」 …夕方のコト? そう言われても思い当たらず、俺は八戒に聞き返す。 「えぇ、あの…なんか帰ってきた時、機嫌悪かったじゃないですか。」 だからどうしたのかと思って…と控えめに訊いてくる八戒に、俺はやっと理解した。 「あ、もちろん、言いたくないんだったら言わなくてもかまいませんけど…」 もごもごと口ごもってる様子が可愛くて仕方ない。 というより、自分のコトを想ってくれているのがわかるから… ついつい顔がニヤけてしまう。 「もぅ! ニヤニヤしてないで下さいよ!」 なんか、恥ずかしいじゃないですか…と肘で小突かれてしまった。 「悪ィ、なんか嬉しくってよvv」 短くなったタバコを灰皿に押し付け、八戒の唇に軽く接吻(キス)を落とす。 「ちょっとな、馬鹿な女が俺の髪を褒めてくれちゃったワケ。」 そう茶化したように言えば、あぁ…と納得がいったような顔を八戒はした。 「それで、だったんですね。」 「そゆコトvv」 そう言って苦笑してみせると、八戒は何か考え込むように一瞬の間をおいて… そして、言葉を紡いだ。 「でも…僕も、悟浄の髪の毛、好きですよ?」 「ん…」 「…大切な人の、髪の毛ですから…」 「…サンキュvv」 …八戒の言葉だったら、こんなに素直に胸にしみこんでくる。 多分それは、俺のコトを大切に想ってくれてるから。 それを俺も知っているから、多分、素直に聞ける。 こっぱずかしいけど…多分、愛されちゃってるから。 禁忌の子供だろうが、なんだろうが。 俺っていう…沙悟浄ってヤツを、マジで愛してくれてるから。 「…あふ…」 眠そうに欠伸をした八戒を腕に抱いて、布団の中へともぐりこむ。 「おやすみvv」 そう言って八戒の綺麗な額に接吻を落とした。 「おやすみなさい…悟浄。」 そう返ってきた声は半ば夢の中。 その声に誘(いざな)われるかのように、俺も穏やかな眠りへと身をゆだねたのだった。 アナタモ知ッテイルヨウニ、ボクハ禁忌ノ子供デス。 目モ、髪モ、血デ染メタヨウニ紅クテ。 ソレデモアナタハ… ボクヲ愛シテクレルカラ… |
う〜ぎゃぁ〜…(断末魔の声) 5月8日ってことで、58の日記念に浄八SSを…なんて 思った夏樹葉がバカでした。 申し訳ない…実はこれ、ずっと寝かせっぱなしだった ネタです…マジで(汗) しかも、裏に行く予定だった品物(滝汗) いいです、裏は別に書きますから(爆) |
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